アトピー性皮膚炎について
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が寛解と悪化を何年にもわたって繰り返す慢性疾患で、アトピー素因がある方に多く見られます。体質的に皮膚のバリア機能の低下と免疫学的要因があるところに、外から様々な物質が皮膚を刺激して発症します。
両親の一方が、IgE抗体ができやすい体質であったり、両親の一方にアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギー疾患があったりする場合、その子どもはアトピー素因を持っていると考えられます。
アトピー性皮膚炎の悪化要因としては、乳幼児では食物アレルゲン、学童児から成人にかけては、花粉、ダニ、ハウスダストなどの環境アレルゲンがありますが、空気の乾燥、ストレス、汗なども影響します。
アトピー性皮膚炎の
主な症状、診断
日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎の診断基準では、下記の3つが当てはまれば、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断するものとしています。
- 湿疹にかゆみを伴う
- 湿疹が左右均整に現れる
- 湿疹は乾燥肌程度のものもあれば、
化膿したものまで様々な程度がある - 湿疹が寛解と悪化を繰り返す
アトピー性皮膚炎は発症する年代に
よって以下のように症状が変遷します
小児のアトピー性皮膚炎
最も割合が多いのが小児期のアトピー性皮膚炎です。
およそ2歳頃から全身的に乾燥が起きはじめ、首、肘の内側、膝の内側などを中心として皮膚炎が起こります。この頃から、血液検査で食物アレルゲンに対してIgE抗体が陽性と出るようになります。しかし、その後は一旦、思春期頃に皮膚炎が改善することがほとんどです。
大人のアトピー性皮膚炎
それまでのアトピー性皮膚炎が落ち着いていても、再度20歳前後から悪化したり、あるいは小児期には皮疹が出ていなかったのに20歳を過ぎてから皮疹を起こしたりします。血液検査では、花粉、ハウスダスト、ダニなどの環境抗原にIgE抗体陽性と出るようになります。
昨今は、高齢者がアトピー性皮膚炎を発症することがよくあり、一旦発症すると難治性で、一生治りにくい特徴があります。
アトピー性皮膚炎の検査
血液検査を実施して、アトピー性皮膚炎の状態を把握します。アトピー性皮膚炎の重症度を評価する目的で、TARCまたはSCCA2が測定されます。また、特異的IgE抗体検査により、花粉、ダニ、カビ、ペットなど、悪化要因を確認します。
なお、特定のアレルゲンでIgE抗体陽性と出たとしても、そのアレルゲンが必ずしも悪化因子であるとは限りません。また、ある食材に対してIgE抗体陽性と出たとしても、血液検査の結果だけを見てその食材を食べないようにするのは適切ではありません。さらに、ごく一般的な血液検査も実施します。
必要と判断した場合、アトピー性皮膚炎に似た皮膚疾患との鑑別のための検査も行います。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎治療の重要性
かゆみのために夜ぐっすり眠ることができないと、身長の伸びが少なくなったり止まったり、学業や部活にも差支えます。
症状が顔に現れている場合には、網膜剥離や白内障などの眼の合併症によって視力が落ちることがあります。
子どもをケアするご家族の負担や心労もかなり大変です。早い段階で適切な治療を行うことによって、こうした悪影響を予防することが可能です。
アトピー性皮膚炎を
治療するための3本柱
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、
- スキンケア
- 薬物療法
- 悪化要因の除去
の3本柱になり、いずれも必須の対策です。
適切な治療によって症状を管理すれば、皮膚炎が寛解した状態になることが期待できます。